これは何?
ICML2020に投稿された Confident Learning: Estimating Uncertainty in Dataset Labels という論文が非常に面白かったので、その論文まとめを公開する。
論文 [1911.00068] Confident Learning: Estimating Uncertainty in Dataset Labels
超概要
- データセットにラベルが間違ったものがある(noisy label)。そういうサンプルを検出したい
- Confident Learningという方法を提案。現実的な状況下でSOTAを達成
- PyPIに実装を公開済みですぐに使用可能(
pip install cleanlab
)
目次
- これは何?
- 超概要
- 目次
- 私感
- 論文の概要
- Class-conditional classification Noise Process
- Confident Learningの概要
- 同時分布Qの推定
- データクリーニング
- 実験結果
- まとめ
- 参考
私感
- シンプルな手法かつ直感的に納得の行くもの
- すぐに使えるようにpython packageにしてくれているのが神か?
- ハイパーパラメータないのも神か?
- 使うモデルに制約が(すく)ないのが良い。ニューラルネットでもランダムフォレストでもロジスティック回帰でも
- 論文の結果を見る限り、Noisy Label に対する第一選択肢として良さそう
- 他手法との組み合わせも可能そう。例えば、誤っているとされたラベルにPseudo-Labelをつけたり、mixupなどと組み合わせるなども可能。実際に論文の実験ではCo-teachingのあわせ技でモデルを学習
論文の概要
論文の内容を箇条書きすると以下のようになる。
- Noisy Labeledなデータセットに対しての課題
- ラベルノイズがどのような特徴を持っているか?
- どのサンプルのラベルが間違っているのか?
- ノイズありの状況下でどう訓練したら良いのか?
- 上記の課題に対応するためのアプローチConfident Learning(CL)を提案
- CLを使うメリット
- どのクラスはどのラベルに間違えられやすいかを取得可能
- どのサンプルのラベルが間違っていそうか取得可能
- (確率と見なせるものを出力するならば)どんな判別器に対しても使用可能
- 多クラス分類対応
- すぐに使用可能 (
pip install cleanlab
)
- 仕組みは?
- 真のクラスと与えられたラベルの同時分布 を なしで推定
- 性能は?
- 理論的に妥当
- Class-conditional classification Noise Process (CNP) という現実的な仮定
- クラスインバランスやモデルの性能に対して頑健であるということを理論的に保証
- 実験的に高性能
- CIFAR-10を用いた実験で、他の手法よりも同等もしくは良い性能を発揮
- Sparsityの大きい(現実に近い)状況では他の手法の性能を凌駕
- 理論的に妥当
以下自分が重要そうだと思ったところを解説する。解説は基本的に大雑把に流れを見てから細かいところを説明という流れで進む。大雑把なところでは疑問点が浮かび上がるかもしれないが、そのまま読み進めてほしい。
Class-conditional classification Noise Process
まず考えたいのは「ノイズはどのようにもたらされるか?」だ。 Noisy Labelはラベルをつける人の勘違いや早とちり、知識不足などによって引き起こされると考えられる。
たとえば、狼の画像は犬と間違えやすいだろう。狐と間違える人も一定数いるかも知れない。一方、狼をシマウマと間違えるような人は少ない。
このように、ノイズというのは真のクラスによってのみ決まると仮定する。このことを定式化すると以下になる。
真のクラスを、与えられたラベル(noisy label)をとするとき、 がになる確率は以下のように定義する。
この条件付き分布を求めるのには、同時分布がわかればよい。すなわち、
をどうにか推定できれば、ノイズの発生の特徴がわかる(狼の画像はどれぐらい犬に間違えられやすいかなど)。
さらには、これを用いて怪しいラベルの特定なども行うのだがそれは次のお話。
Confident Learningの概要
前述したように、CLにおいて重要なのは同時分布を推定することである。これをどうやって求めるのかは気になるところだが、一旦置いといて、CLの全体の流れを見てみよう。
CLの概要は以下の図に集約される。図の緑色の点線で囲まれた部分がCLで処理する部分である。
入力
必要なのはデータとモデルの出力確率である。 まずnoisy dataで訓練したいモデルを訓練する。そして、訓練済みモデルに推論させて確率を出力させる。(細かい話だが、訓練はtrainで推論はvalidで。)
出力
CLでごちゃごちゃやった結果。Labelに問題のあるデータと問題のないデータが出力される。
CLの処理
入出力の間で何が行われているか。それは、同時分布の推定である。どうやって推定するか、詳細な説明はあとで行うのでここでは直感的な説明にとどめる。
がわからない。そこで、モデルの出力確率が大きいものをと見立ててしまおうというアイデアを採用する。出力確率が大きいものに限れば、ラベルとおそらく真のクラスの組み合わせについて、数をカウントできる(下図参照)。それが上図の右上の表である。
カウントが求まったらあとは正規化すれば、推定された同時分布が得られる。
ラベルの間違っているサンプルは、の割合とモデルの出力にしたがって"怪しい"ものからラベルが間違っているとすれば良い。
同時分布Qの推定
上記での大雑把な説明を厳密にする。同時分布を推定するには、モデルの出力を使ったカウントの工程と、行列CをQに変換するための正規化の工程に分かれる。
Cを作るカウント方法
カウントは厳密に式で示すと(3)である。
式はごちゃごちゃしているが日本語に直すと、「カウント数[i][j]は、iをjと判別したものの中で、出力確率が以上の個数」となる。は以下(2)で定義される。これは「そのクラスの出力確率の平均」を意味する。(とは与えられたラベルがiであるサンプルの部分集合である。|・|は要素数を示す。)
こうすることでうまくハイパーパラメータを回避している。もちろんに分位点などを設定することもできるが、ハイパラは増える。(ノイジーラベルは評価、検証が難しいということで最適なハイパラの探索はきつい気がする。)
ちなみに、一つのOut-of-fold分のCを作る計算量は、クラス数をm, サンプル数をnとしたとき、である。
Qへの正規化
Cをただ正規化してQを作るわけではなくて、具体的には(4)のような計算を行っている。
これは、以下のようなお気持ちが入っている。理想的なカウントを想像していただきたい。
しかし、今という閾値によってカウントされたりされなかったりするので、ここでずれた分を補正する必要がある。
単純な正規化の式
と比較すると(4)は各iに対して倍することによって、この補正を行っている。
データクリーニング
ラベルが間違っていそうなサンプルを抽出する。論文中では5つのやり方が提示されていたが、仮定や理論にもっとも則しているとされたやり方を紹介する。
といっても以下の説明で終わり。
実験結果
ここではCIFAR-10を用いた実験結果だけ説明する。ImageNetの実験結果は論文を参照していただきたい。
真の同時分布Qを作り、それに従ってCIFAR-10をnoisy datasetに加工し実験に使用していた。 使用モデルはResNet50をCo-teaching(Han, 2018)で学習したもの。
同時分布Qをうまく推定できているか
パット見、真と推定の誤差(右)は結構少ないように感じる。
Noisy Labelを検出できているか
Table2 は、誤ったラベルの検出性能を示している。 示されている手法の一覧は、誤っているラベルのサンプルの抽出方法を示している。理論通りPBNRが良さそうというのが結果に現れているが、他の性能もなかなか悪くない。(というのが自分の見解)
Sparsityは真の同時分布Qに含まれる0の割合である。現実のデータセットはSparsityが大きいと推測される(狼をシマウマに間違える人はいない)。
他手法との比較
Table1 の上段はnoisy datasetのCIFAR-10をデータクリーニングしたあとにもう一度学習した正解率を示している。下段は近年のnoisy robustな手法である。
多くの場合、Sparsityが0の場合においては他の手法と同等、もしくは良い結果を達成している。特筆すべきなのはSparsityが0.6になったときである。現実に近い高Sparsityな同時分布においては、疑いなく他の手法よりも良い結果が現れている。
まとめ
もう一度、論文の概要をここにコピペする。
- Noisy Labeledなデータセットに対しての課題
- ラベルノイズがどのような特徴を持っているか?
- どのサンプルのラベルが間違っているのか?
- ノイズありの状況下でどう訓練したら良いのか?
- 上記の課題に対応するためのアプローチConfident Learning(CL)を提案
- CLを使うメリット
- どのクラスはどのラベルに間違えられやすいかを取得可能
- どのサンプルのラベルが間違っていそうか取得可能
- (確率と見なせるものを出力するならば)どんな判別器に対しても使用可能
- 多クラス分類対応
- すぐに使用可能 (
pip install cleanlab
)
- 仕組みは?
- 真のクラスと与えられたラベルの同時分布をなしで推定
- 性能は?
- 理論的に妥当
- Class-conditional classification Noise Process (CNP) という現実的な仮定
- クラスインバランスやモデルの性能に対して頑健であるということを理論的に保証
- 実験的に高性能
- CIFAR-10を用いた実験で、他の手法よりも同等もしくは良い性能を発揮
- Sparsityの大きい(現実に近い)状況では他の手法の性能を凌駕
- 理論的に妥当
CLは、モデルに依存しないのが魅力的である(近年だとニューラルネット限定などが多かった)。また、Sparsityが大きい状況で特に性能が良いのは、現実の状況に則していてCLの使用は妥当であると感じさせられる。 また、実装が用意されているのも親切であり、scikit-learnを叩くのと同じ感覚で使用可能である。
ただ、CLに使用するためのモデルは何がいいのか、どんな条件を満たすことが必要なのか、はもっと知りたいところであり今後の研究の動向に注目したい。
参考
[1911.00068] Confident Learning: Estimating Uncertainty in Dataset Labels
An Introduction to Confident Learning: Finding and Learning with Label Errors in Datasets